ふるさと納税で97億円税収減!ふるさと納税の裏側

2023.7.11更新

こんにちは、見つける。ツクル。
家計の総合医。ファイナンシャルプランナーの内田英子です。

先日こんなニュースを目にしました。

ふるさと納税 過去最大97億円流出 世田谷区長「耐えられない」 国による制度見直し訴え

6月23日付けの東京新聞の記事です。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/258413

記事を読むと、ふるさと納税によって、世田谷区の税収が97億円も減っているといいます。
昨年度から対策を立ててきたにもかかわらず、その対策による効果を吹き飛ばす減収が発生し、
国に制度の見直しを訴えているといいます。

ふるさと納税によって、なぜ世田谷区の税収が減ってしまったのでしょうか。
また市区町村の税収が減るとわたしたちには不都合はあるのでしょうか。
家計の総合医の視点で解説していきます。

1.ふるさと納税の基本
2.ふるさと納税の“おトク”のからくり
3.市町村の税収が減る!ワンストップ特例の副作用
4.地元の自治体の税収が減ることによる不利益
5.地元にやさしいふるさと納税のやり方

ふるさと納税の基本

まず、ふるさと納税の基本について見ていきましょう。

  •  都道府県、市町村への「寄附」です。

  • ご自身で「寄附先」を選ぶことができます

  • 原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が税金還付によって戻ってきます。

ふるさと納税はその名称のとおり、「ふるさと」に「納税」できるしくみです。
税金には国に納めるものと各自治体に納めるものがありますが、
自治体に納める場合は、ご自身の住むいわゆる“地元”に納めます。
最近では生まれ育った地元を離れ、別の自治体に移り住み、“地元”とする方も多くいらっしゃいます。
地元で生まれ育つ中では、ゴミの回収や学校、医療サービスの利用など、
さまざまな住民サービスの恩恵を受けていたはずです。
一方、大人になってから生まれ育った地元を離れてしまうと、地元に恩返しをできる機会はなかなかありません。
そこで、生まれ育った地元を離れた方が、地元に恩返ししたいという願いを叶えられるように、
と創設されたしくみがふるさと納税なのです。

ふるさと納税の“おトク”のからくり

ふるさと納税のしくみを一言で表わせば、こうです。
「自ら選んだ自治体へ、国や居住地に支払うはずだった税金を振り替える。」
つまり、本来自分たちが納めるべき税金額は変わらないものの、
納める先を自分たちの選んだ自治体へ切り替えることができる、ということですね。
ちなみに、利用にあたっては自己負担額2,000円が必要です。
また、ご自身の負担額をふるさと納税前と変えないためには、
寄附額がご自身の納めている住民税所得割額の20%を超えないことが基本ルールです。
詳しい内容や注意点については、こちらの記事でも解説しています。
https://fplabo-happyfamily.com/2022/01/08/blog20220108/

ふるさと納税は自己負担2000円で、返礼品ももらえておトク、といったことを聞いたことがある、
という方もいらっしゃるかと思います。
ふるさと納税では、税金の納め先を振り替えた後、振り替え先の自治体から返礼品を贈ることも認められています。
自己負担2000円で返礼品を手に入れることができるからくりですね。
ちなみに返礼品の還元率は寄付額の30%未満、と法律により定められています。

市町村の税収が減る!ワンストップ特例の副作用

納税先を振り替えるにあたっては、基本的に確定申告することが必要ですが、
給与所得者や年金生活者の方など、確定申告不要とされる方には、
確定申告を不要とできるしくみも設けられています。
それが、「ワンストップ特例」です。
ワンストップ特例は一言で言えば、ふるさと納税の寄附額を全額地元に納める住民税から振り替えるしくみです。
利用にあたっては条件がありますが、利用することによって、確定申告の手間を省くことができる、
というベネフィットを享受することができます。
このとき、今のお住まいの場所に納める住民税額は減るといった副作用が発生します。

住む自治体の税収が減ることによる不利益

ご自身の住む自治体の税収が減ることによってわたしたちに不利益はあるのでしょうか。
残念ながら不利益が発生する可能性はあると思われます。
自治体の税金でまかなわれている生活サービスは多岐にわたります。

(図:国税庁「税の学習コーナー」より抜粋。
https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page01.htm

いずれもわたしたちの“いつもの暮らし”に欠かせないものばかりです。
税収が減れば、利用できなくなったり、あるいは自治体の借金が増えて、
利息の支払いの分、サービスの質が低下し、利用しづらくなる、といった事態につながるかもしれません

地元にやさしいふるさと納税のやり方

物価が上昇する今、ふるさと納税を生活防衛の手段として活用されている方もいらっしゃることでしょう。
ふるさと納税が今住んでいる地域にはマイナスなのかも知れないとしても、
なかなか止めるという選択肢はとれないかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった場合は、ぜひ、ワンストップ特例ではなく、確定申告をされてください。
詳しくは割愛しますが、確定申告を行うことによって、寄附金額の一部は所得税から還付され、
残りが個人住民税から還付されるようになります。
所得税は国に納めます。
つまり、確定申告をすることによって、ふるさと納税による税の振替元を
一部国への税金に切り替えることができる、ということですね。
地元へ納める税金額のマイナスを緩和することができるようになることでしょう。
確定申告のやり方など、詳しくはこちらの記事をお読みください。
https://fplabo-happyfamily.com/2022/01/08/blog20220108/

まとめ

ふるさと納税のしくみはさまざまなベネフィットも生み出した一方で、
世田谷区の事例のように課題も残されているように思います。
税制は不変ではありません。また、税金はわたしたちの暮らしにつながっています。
わたしたちの将来の暮らしの雲行きが怪しいものなら、利用後、自分たちの意思を示すことも必要なのではないでしょうか。
ふるさと納税をされる際は、返礼品をもらって終わりではなく、寄附したお金が適切に使われているか、
住む市町村のお財布事情はどうか、関心をもちながら進めていきたいたい、そんな風に考えています。