保険のウソ①医療保険

こんにちは、生活設計塾幸せ家族ラボ代表、
家計運用コンサルタントの内田英子です。

近年入院が短期化しているということは、
すでに多くの方に知られるところでしょう。

そのような社会の変化を汲んで、保険の営業現場では
短期の入院に備える医療保険への加入を勧める流れも少なからずあるようです。


 あっ、わたしの時もそうだったな、


なんて心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 実際家計コンサルの場面でも、短期の入院に備える内容になっている医療保険の加入は少なくないです。
むしろ、
長期入院に備える保障は時代遅れで不要なお金なのでは、
と不審に思われてご相談をお受けする場合もあります。

たしかに、日帰り入院も増えてきていますし、
短期の保障に絞って医療保険の見積もりをしてもらうと保険料は安くなりますから、
保険料の節約もできます。

保険料の安い短期入院に備える医療保険を勧められて、売り圧力の少ない接しやすい営業マンの方だな、
なんて営業マンの方に好感を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 でもそのように契約した医療保険は、
本当にいざという時に活用できるでしょうか?

 

大切な家計のお金を使うのですから、活用できなければ、本当にもったいない!

 今回のブログでは、家計の総合医の視点で
医療保険の販売の現場で見られる2つのセールストークを検証しながら、
医療保険の見極めポイントを探ります。

※医療保険の基本や詳しい内容については過去の投稿(医療保険とは?)でご確認ください。

【目次】

1.よくある医療保険のセールストーク2つ

A.入院はお金がかかります。

B.短期の入院に使える保険がいいですよ。保険料を節約しながら上手に備えることができます。

2.実際のところ医療保険は活用できるのか

3.医療保険の見極めポイントまとめ

1.よくある医療保険のセールストーク2つ

A.入院はお金がかかります。

B.短期の入院に使える保険がいいですよ。保険料を節約しながら上手に備えることができます。

検証A. 入院はお金がかかります。

 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」では、
入院時の1日あたりの自己負担費用の平均は23,300円だそうです。

  厚生労働省「平成29年患者調査」によると
入院時の平均在院日数は29.3日ということですから、
こういったデータを見せられると、もし入院したとしたら
1日約2万円×29日で、58万円もかかるの?
と想定以上の金額に怖くなってしまう方もいらっしゃることでしょう。

一方で、こんなデータもあります。
“入院時の自己負担費用の平均は約21万円”
生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」より
 先程の1日あたりの医療費からの試算と比較すると
大きな差があることに気が付きますね。
なぜ、このような差が生じているのでしょうか?

入院が短期化している背景はもちろん、
平均値の押し下げ要因となっていることでしょう。
しかし個人的にはもう一つ理由があるのでは、と推測しています。
それは長期の入院になった場合は、
多くの方が上手に自己負担額を抑える工夫をされているという状況です。

えっ、自己負担額を抑える工夫ができるの?

と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
 実はこのように推測する根拠は二つあります。

  • 差額ベッド代も含まれた自己負担額であること。

  • 医療費の自己負担額を一定に抑える仕組みがあること。

 実は、入院の際の自己負担額を抑える工夫はご自身でできる余地があるのです。
その際のポイントは、やはり差額ベッド代でしょう。
 入院をするということは療養サービスを受けながら病院に滞在をし、
療養に合わせた食事の支給を受けるということですよね。
療養に必要な医療費が発生しますし、
滞在するのですから、家賃に替わる費用も食費に替わる費用も発生します。

医療費と食事代に関しては、別記事(医療保険とは?で解説した通り、
一定の金額に自己負担額をおさえることができる仕組みがあります。

しかし、家賃に替わる費用に関しては全額自己負担となり、
ご自身で負担をする必要があります。
 実際は相部屋を選ぶか個室を選ぶかと選択をすることとなりますが、
この選択が実は入院時に必要となる自己負担額に影響を与えることとなるのです。

万が一の時には相部屋でいいわとお考えの方なら、
差額ベッド代は不要です。
長期の入院時も自己負担額を抑える工夫の余地があることでしょう。
(※個室で療養を受けても、療養の状況によっては
差額ベッド代の支払いが不要な場合もあります。)

検証B. 短期の入院に使える保険がいいですよ。
保険料を節約しながら上手に備えることができます。

 

 短期の入院に備える保険(60日型)への加入を想定し、検証します。

 【メリット】

1.保険料が安い。

2.短期入院でも給付を受けることができる。

まず、加入する医療保険の保障を短期に絞るメリットとして、
保険料が安くなることが挙げられます。
同じ保険会社の同じ保険商品であっても、
たったこれだけで保険料負担をおさえることができるのですから、
家計にとってはわかりやすいメリットとなり、加入の後押しになるでしょう。

前出の入院時の平均在院日数29.3日を想定すると、
60日の入院保障は十分な印象を持ちます。
 なにより、日帰り入院でも給付金を受け取ることが出来るのですから、
少し前に多かった免責5日などのタイプの医療保険と比べると、
入院したとしても長引くこともなく退院でき、
順調に健康を維持できそうな方にとっては活用の機会が増えそうです。

次にデメリットを解説します。

【デメリット】

1.短期すぎる入院では申請コストがかさむ可能性。

2.短期入院を繰り返す場合には給付を受けることができない。

3.長期で療養が必要になった場合には給付を受けることができない。

基本的に給付金を受けるためには、被保険者ご自身からの申し出が必要ですが、
その際診断書の添付を求められるのが一般的です。

別記事(医療保険とは?)で解説した通り、
診断書の添付を不要とする生命保険会社も増えてきていますが、
一部の生命保険会社では対応していません。

一般的に診断書の発行には5,000円程度かかりますから、
その場合は短すぎる入院の場合、
給付金額よりも申し出にかかるコストの方が高くつき、申し出をやめてしまう、
といったことも起こりうることでしょう。 

また、入院が必要になった場合に、2-3カ月おきなど
以前の入院から半年たたないうちに繰り返す状況になったとしたら、
どうなるでしょうか?
実はここに、見落としがちな医療保険のルールがあります。
医療保険では、一般的に一度病気により入院されたのち、
退院日の翌日から180日以内に再度病気で療養が必要になり入院した場合は、
一般的に1入院として取り扱われます。

保険商品によっては、2回目の入院が別の病気によるものであっても、
180日以内であれば1入院と数えるものもあります。

つまり、これがどういうことを意味するのかと言うと、
例えばもしも30日程度の入院ののち、退院の翌日から180日以内に
2回目、3回目と入退院を繰り返した場合には、
60日型ではすべての入院に対する給付を受けることができない可能性が出てくるということです。

ちなみに、厚生労働省「平成29年患者調査」によると、
糖尿病による入院の平均在院日数が33.3日で、
脳血管疾患では、平均在院日数は78.2日となっています。
入院が短期化しているといっても、依然として入院日数が長くなる疾患もあることがわかります。

もちろん保険で万が一の費用のすべてをまかなう必要はありません。

しかし、万が一を想定して、日帰り入院で終えることができる状況と、
入退院を繰り返す状況では、
どちらの方がご自身やご家族にとって、また家計にとって大きな影響を与えると思いますか?
おそらく多くの方によっては後者でしょう。
そもそも、保険はご自身では保有できない大きな、
またご自身の努力だけでは避けられないリスクを転嫁する手段です。

現状を正しく知り、原点に立ち返れば、
おのずと医療保険を活用すべき状況と
ご自身にとって必要な医療保険の見極めポイントが見えてくることでしょう。

 

3.実際のところ医療保険は活用できるのか

 家計コンサルをお受けする中で、保険には入っていたけれど、
いざ病気になったときには要件に当てはまらず使えなかった、などというお話もお聞きする機会があります。
 現在医療の進歩や社会の変化にともなうニーズの変化に応じて
さまざまな新しい保障の医療保険やがん保険が発売されています。
 新しい保障だからこそ、給付の要件が合わせづらかった、
といった状況も発生しています。
 医療保険の給付を受けるためにはご自身での申し出が基本です。

万が一の時には、ご自身で申し出ることを想定し、
あらかじめ保障内容の理解を深めておきましょう。

3.医療保険の見極めポイントまとめ

保険は相互扶助という優れた仕組みをもつものですが、
そもそも療養が必要になった際に発生する収入減少と費用増加による
家計破綻リスクを移転する、万が一に備える一つの手段です。

万が一の際の家計の破綻リスクを低減する日々の暮らし方の工夫や
貯蓄増の工夫を土台とし、
そもそも負担を抑える工夫はできそうにないか、
ご自身なりに想像してから医療保険について検討されると、
きっとご自身にあった医療保険のかたちが見えてくることでしょう。