【2022年4月~】働きながら受ける年金のルールが変わります。

2022.3.23更新

こんにちは、家計の総合医。
ぐっすり眠れる家計運用コンサルタントの内田英子です。

 

先日東北で大きな地震がありましたね。

四国は揺れませんでしたが、
本当に驚きました。
電力不足も重なり、東北地方の方は
本当に今、大変な思いをされているかと思います。
1日も早い復旧を願っております。

さて、年金改正により、
2022年4月以降
働きながら受ける年金のルールが変わる見込みです。

 

働きながら受ける年金は「在職老齢年金」といい、
年金と同時に受け取る給与の金額によっては、
合算した金額が一定のバーを超えた場合、
超えた部分の年金の一部を支給停止として
残りが支給されるというルールが設けられています。

また、
65歳以降年金を受け取りながらも厚生年金に加入し、
厚生年金保険料を納めていた場合、
引き続き将来の年金額を増やすことはできますが、
年金額への反映は退職後、
もしくは70歳になってからというルールもありました。

今回の年金改正においては、
端的に申し上げれば、これまでは年齢に応じて2つあった年金減額のバーが
年齢に関わらず1つに統一され、
65歳以降働きながら厚生年金保険料を納める場合、
納めた保険料に応じて
毎年増えた年金を受け取れるようになる見込みです。

 

そこで、今回のブログでは
在職老齢年金の基本から、
今回の在職老齢年金に係る年金改正の内容について
家計の総合医の視点で解説します。

 

【 1 】在職老齢年金の基本
【 2 】在職老齢年金の改正①
年齢に関わらず年金減額のバーが統一
【 3 】在職老齢年金の改正②
65歳以降、働きながら増えた年金を毎年受け取れるように。
【 4 】まとめ

【 1 】在職老齢年金のきほん

在職老齢年金は前述のとおり、
一言で言えば「働きながら受け取る年金」です。

しかし、厳密にいえば
60歳から69歳までのあいだに、
厚生年金に加入して厚生年金保険料を納めながら働くときに、
受け取る年金を指しています。

一方、65歳以降に受け取る「老齢年金」には
老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類があります。
老齢厚生年金は、主に企業等にお勤めの方が加入しますが、
生年月日、性別によっては
65歳よりも早めに年金の受け取りがはじまります。
※1961年(昭和36年)4月2日以降生まれ(女性は1966年4月2日以降生まれ)の会社員の方の場合は
65歳以降にしか年金の受取は始まりません。

具体的に申し上げれば、
今年(2022年)の4月2日以降に65歳になる男性であれば、
過去に厚生年金に加入して一定の要件を満たしている場合、
すでに63歳から一部の年金(特別支給の老齢厚生年金)を受け取っているはずです。

つまり、「在職老齢年金」は65歳までに受け取りが始まる「特別支給の老齢厚生年金」を含め、
厚生年金に加入して働きながら60代で受け取る老齢年金を指しているのです。

異なる視点で言いかえれば、
60歳で会社を退職後、厚生年金に加入せず
定期的な収入を得ている自営業の方等が受け取る年金は
「在職老齢年金」ではない、ということですね。

さてこの「在職老齢年金」ですが、
支給にあたっては以下のような一定のルールが設けられています。
(※いずれも現行のルールです。)

1.一定の基準に基づき年金額は減額される。
2.年金減額が決まるバーは65歳未満と65歳以上で違う。
3.65歳以降働きながら納めた厚生年金保険料は在職老齢年金には反映されない。

在職老齢年金については一定の条件の下、
年金額が減額されるルールが設けられています。
これは、年金には万が一の所得補償という側面があるための措置と思われます。

年金減額のルールを具体的に申し上げると、
一定の金額をバーとして設け、
年金額と賞与込みの月収額を合算した金額がバーを超えた場合に、
超えた部分の一部を減額する、
というものです。

  バーとなる金額は年齢に応じて2つに区分されています。

65歳未満の場合は、28万円
65歳以上70歳未満の場合は47万円

※図は著者作成。無断転載・コピーを禁じます。

具体的にはどれくらいの年金が減額されるのでしょうか?
例えば現在62歳のAさん(女性)が老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を月8万円受け取っており、
賞与込みの月収が25万円で
厚生年金に加入して働き始めた場合に減額される年金額を試算してみましょう。
減額される年金額の計算方法は以下の通りです。

年金が月2.5万円減額され、月年金額は5.5万円となります。

 8万円+25万円=33万円
 (33万円-28万円)÷2=2.5万円…減額される月年金額

また、例えば上記のAさんが65歳以降、
上記のお給料で厚生年金保険料を納めながら2年間働いた場合、
年金額を月3,000円弱、年間3.3万円程度増やすことができますが、
これらの年金額への反映は現行のルールでは在職時にはされず、
67歳の退職後、とされています。
(退職年齢が70歳を超える場合は70歳になった時に反映されます。)

【 2 】在職老齢年金の改正①
年齢に関わらず年金減額のバーが統一

今回の年金改正により、
これまでに設けられていた65歳を節目とした2つの年金減額のバーが
1つに統一されることになりました。

いくらに統一されるのかというと、
年齢に関わらず47万円です。

つまり、すでに65歳に達している方にとっては
年金減額のバーが変更されることはありませんが、
65歳未満の方の場合は年金減額のバーが上がり、
給与が変わらないのであれば
受け取れる年金額が増えるということになります。

では、どれくらい年金が増えるのでしょうか?

以下の表をご覧ください。
年金額と賞与込みの月収額に応じた65歳未満の在職老齢年金額の一部を一覧にしたものです。
※いずれも著者作成。無断転載・コピーを禁じます。

黄色で網掛けしているのは、年金が減額されず受け取れる部分です。
改正後は明らかに、面積が増えていることがわかりますね。
これまでは65歳未満で年金を受け取りながら働いていると、
給料が増えるほどに年金が減額されていたというジレンマがありましたが、
改正後は多くの方にとって
そのジレンマが解消されることが期待されます。


では、具体的にはどの程度年金額が増えるのでしょうか。
前出のAさん(賞与込みの月収が25万円)を例にあげ、
表と照らし合わせながら、改正後に増える年金額を確認してみましょう。

上表より、これまでのルールであれば受け取れる年金額は月5.5万円です。
一方下表より、4月以降は、年金は減額されることなく、
8万円まるまる受け取れるようになる見込みであるということがわかります。

よって、改正後は給与が変わらないのであれば、
Aさんの年金は毎月2.5万円増える、ということがわかります。 

なお、退職後に給与が大きく下がったことにより、
雇用保険から高年齢雇用継続給付を受けながら働いている場合は、
給与に応じた年金額の調整は上記のルールに基づきますが、
高年齢雇用継続給付額分が年金から減額されます。

 

【 3 】在職老齢年金の改正②
65歳以降、働きながら
増えた年金を毎年受け取れるように。

 

これまでは、年金を受け取りながら
65歳以降厚生年金保険料を納めながら働いても、
年金額に反映されるのは退職後あるいは70歳に達した時だった、
ということは前述しました。
こういった年金額改定のしくみを「退職時改定」といいます。

 

今回の年金改正ではあらたに「在職定時改定」という
年金額改定のしくみが設けられています。

これにより、65歳以降も年金を受け取りながら厚生年金に加入した働く場合、
年に1回、10月に年金額が改定されるようになる見込みです。
つまり、働きながら年金を増やし、
70歳まで在職すれば毎年増えた年金を
受け取れるようになったということですね。

 

例えば前出のAさん(賞与込みの月収が25万円)であれば
1年間厚生年金保険料を納めるごとに増やせる年金額は
年間16,000円程度、月1,400円弱です。
働く期間を1年増やすごとに年金額が年16,000円、月1400円弱増やせるということになります。

(※しくみの導入は4月以降ですが、増えた年金が受け取れるのは202210月以降となります。)

1400円程度か、とがっかりされた方もいらっしゃるかもしれませんが、
退職後は多くを年金に頼る暮らしが見込まれます。
長い目で見れば、これからの物価上昇に備えて、
少しでも年金を増やせるチャンスは貴重です。

 

ちなみに、「在職定時改定」によるメリットは実はこれだけではありません。
年下の配偶者がいるものの、
加給年金における厚生年金の加入要件(厚生年金に20年加入)をわずかに満たせず、
65歳以降加給年金を受け取れない、といった方の場合、
「在職定時改定」導入により
65歳以降加給年金を受け取れるようになる可能性もあります。

加給年金は年間40万円弱。年下の配偶者が65歳になるまで受け取れます。
心当たりのある方はお早めに、
年金事務所などで相談することをおすすめします。

 

【 4 】まとめ

在職老齢年金の基本と、年金改正による変更点を解説しました。
在職老齢年金の改正については、
多くの方にとって朗報となったことでしょう。


特に女性は、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる期間が男性よりも長いです。
そのため、年金減額のバーが上がったことで
60歳以降の資産形成のチャンスを増やすことも可能となるでしょう。

 

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