介護保険(民間)の基本とふまえておきたいチェックポイント

2024.4.1更新

こんにちは。見つける。ツクル。
家計の総合医。ファイナンシャルプランナーの内田英子です。
日々ご相談をお受けしていると、将来介護が必要になった時の不安をお持ちになっている方は少なくないと感じます。
介護が必要になったとき、一般的には公的介護保険を活用することができます。
ただし、サービスを受けるためにはある程度の家計からの拠出も必要となりますから、資金をあらかじめ準備しておくことが必要となります。
介護資金はいつ必要になるかわからないため、老後においては流動性の高い預貯金で準備しておくことを基本としますが、事前に備える期間を持つことができるのであれば介護保険への加入も選択肢となります。
そこで、今回のコラムでは民間の介護保険加入にあたって知っておきたい基本と加入前に確認したいチェックポイントについて解説します。

1.介護保険とは

まずは、介護保険の基本について確認しておきましょう。
介護保険は、あらかじめ保険会社が定めた要介護状態となり、その要介護状態が一定期間継続した場合に、保険金・給付金を受け取ることができる保険です。公的介護保険とは別ものです。
まだ数は少ないものの、生命保険会社や損害保険会社から、さまざまな介護保険が販売されています。
このところは公的介護保険制度に連動して保険金を支払うとするものが増えているように思いますが、そのほかにも「日常生活動作において寝たきり状態など、介護が必要になった時」と「認知症と診断され、所定の状態となった時」に、所定の要介護状態が一定期間継続している場合に保険金/給付金が支払われるものがあります。
介護保険からの給付は大きく以下の4つにわけることができます。

・介護一時金
・介護年金
・死亡保険金
・高度障害保険金

ただし、保険商品ごとに給付は異なります。
所定の要介護状態となった場合に受け取れる給付金は介護一時金もしくは介護年金がありますが、一時金のみとするものや年金だけとするものもありますし、両方の給付があるものもあります。
なお、介護年金を受け取れる期間も商品ごとに異なります。
要件を満たしたうえで5年や10年など期間を限定するものや終身のものがあります。
死亡給付金や高度障害保険金は、両方あるものもありますし、どちらもないものもあります。
受け取れる死亡給付金額は保険商品によって異なり、介護保険金が支払われた分死亡保険金が減るものや金額が変わらないものなど、さまざまなものがあります。

2.介護保険加入前のチェックポイント5選

①保険期間

保険期間は商品ごとに異なりますが、以下の2つに分けることができます。

有期型
終身型

有期型の場合、保険期間は10年間や60歳や80歳までなど、期間限定となり、給付を受け取ることができるのは、原則保険期間内のみとなります。
終身型の場合は、保険期間は一生涯となり、要件を満たせばいつでも給付金を受け取ることができます。

②給付金の支払い要件

給付金の支払い要件は商品ごとに異なります。
一般的な支払い要件は前述のとおりですが、例えば公的介護保険の認定を基準とするものであれば要介護2もしくは3以上であることが支払い要件となるなど、いずれも厳しいものが多いです。
なお、介護保険は40歳から加入できる、とするものが多いように思いますが、3歳から加入できるものや15歳、18歳、20歳など若いうちから加入できるものもあります。
介護保険に早くから加入する場合は、公的介護保険の被保険者とはならないため、公的介護保険の認定を基準としないものは多くあります。
給付金の支払い要件についてしっかりと確認しましょう。

③給付金/保険金の受取方法

介護保険の給付金/保険金は前述のとおり年金形式か一時金形式での受取りとなります。
年金形式の場合、生存している限り年金を支払うとするものが一般的です。
元をとるためには10年程度の年金受取を想定したいところですが、厚生労働省の資料によれば、介護期間の平均は47.60カ月です。
実際の介護期間は差があり、脳血管障害を契機とした介護の場合は、平均介護期間は69.14カ月となっているなど、ケースバイケースですが10年介護状態が続くことは多くないことが推測されます。

なお、一時金受取のみとする場合、将来要介護状態が長く続いた場合は年金受取の場合よりも、受取額が少なくなる可能性があります。
設計は各社異違うため、同じ保険料で同じ保障内容でも給付金額は異なります。
複数のものを比較しましょう。

④保険料の払い込み方法

介護保険の保険料の支払いは月払いや年払いなど、定期的に支払うものが多いですが、一時払いのものもあります。
一時払いのものは特に、介護資金を確保し、資産の取り崩しを遅らせる効果が期待されます。
リタイアが近づいてきた方に向いているでしょう。
定期払いの場合、保険料の支払いは原則保険期間中続きます。
内閣府『令和4年版高齢社会白書』によれば、以下のとおり公的介護保険の5~74歳と75歳以上の被保険者のうち、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合は、65~74歳では1.4%、2.9%、75歳以上では8.8%、23.1%で、75歳以上に要介護認定を受ける人の割合が大きく上昇する傾向にあります。

(出所:内閣府『令和4年版高齢社会白書』)
保険料払込免除特約が付帯されている場合も、75歳程度まで保険料の支払いが続くことが想定されます。
家計の先行きと照らし合わせた上で加入を検討しましょう。

⑤保険料払込免除となる要件

介護保険には所定の要件を満たせば保険料払込免除とできるものがあります。
介護保険の給付金を受けとるシーンでは、経済的にも易しくない状況が推測されますから、加入するのであれば付帯しておきたいところですが、保険料払込免除となる要件は各社異なります。
あらかじめ確認しておきましょう。

3.まとめ

介護保険を活用することにより、介護資金を確保しやすくなったり、高齢期の資産の取り崩しペースを緩やかにできるといった効果も期待されますが、いざ入ろうと思った場合には保険料がかさんでしまう、というケースも目立ちます。
若いうちから加入する場合は、保険料を抑えることもできますが、給付金は定額であり、今後インフレが進んでいく可能性を想定すると、目減りする可能性があります。
ライフプランにもとづき、着実に資産形成をすすめ、複数の介護保険商品を比較した上で加入を検討することをおすすめします。