こんにちは。
見つける。ツクル。
家計の総合医。ファイナンシャルプランナーの内田英子です。
このところ、SNSでの著名人をかたった投資詐欺が相次いでいるそうです。
警察庁の資料によると、SNS型投資詐欺の被害者の方の内訳は、
以下のとおり男性がやや多く、男性では50代・60代の方が約6割を占めています。
出所:警察庁広報資料「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について」
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/sns-romance/sns-romance20240311.pdf
50代・60代と言えば、定年退職前後で第二の人生を迎える方が多い年代です。
社会全体に投資に関する情報があふれる中、老後生活への不安が顕在化すると同時に
退職金としてまとまった金額のお金を受け取る方も多いことから、
被害が広がっていることが推測されます。
私自身、消費生活アドバイザー・消費生活相談員の資格も持っており、
日頃さまざまな消費者トラブルについての情報を多方面より見聞きするのですが、
被害の手口は近年巧妙化しているようです。
一度関わってしまうと閉鎖的な空間により短期間の判断を余儀なくされ、
損失を膨らませる方も決して珍しくないと聞きます。
こういったものと関わりをもたないためには、金融取引に関する正しい知識をもち
最初の段階で違和感に気付けることが大切です。
そこで、今回のコラムでは、せっかくこれまで積み上げてきたご自身の大切な財産を不意に失わないために、
投資初心者のシニアの方にぜひ知っておいていただきたい投資前のチェックポイントを
家計の総合医の視点で3つ解説します。
まず最初に確認したいのは、なぜ投資を行うのか、というあなた自身の目的です。
投資によって収益を得られるかもしれない、と聞くと思わずそのリターンに期待してしまいますが、
投資によるリターンは約束されたものではなく、リスクをとった結果として得られるものとなり、
マイナスとなることも考えられます。(リスクとリターンについて、詳しくは後述します。)
投資の目的がどのようなものであるのかによって、望ましい運用方法は異なります。
なお、NISAはおトクな制度ですが、あくまで収益が出た場合におトクとなるものでありますし、
株式投資がメインとなっています。(NISAについての詳細はこちらの記事では割愛します。)
そのため、リスクは避けられないと同時に一層目的にあわせた運用内容を実行することが大切です。
50代や60代の多くの方はこれからの老後生活を考えるタイミングにあり、
老後生活への経済的な不安を抱える方は少なくありませんが、老後の生活資金を目的とされるのであればなおさら、
丁寧に老後不安をひもとき、いくらの準備が必要なのか、いつの段階で必要としているのか、
またご自身にとって可能な範囲はどの程度なのか、ご自身のキャリアプランやリスク許容度、
公的年金や企業年金の見込み額や資産の状況等をふまえて判断することが大切です。
投資によって収益をえて、最終的にご自身が望まれる暮らしを実現できるように活用できることは望ましいことですが、
そのためにはある程度の時間が必要ですし、正しい知識も必要です。
知識を得ようと思っても、ご自身関心がなければなかなか身に着けられないものです。
地に足のついた投資を実行していくためにも、ご自身にとっての目的を明確にしましょう。
次に、ご自身のリスクについての理解度を確認しましょう。
多くの方にとって最も身近な金融商品と言えば銀行預金かと存じますが、銀行預金は投資商品ではありません。
投資商品には具体的に株式や債券、投資信託といったものがありますが、
預貯金にはない価格変動リスクがあります。
また元本保証もありません。
リスクとは平たく言えば価格のブレ幅を表しています。
価格はマイナス方向にも動きますしプラス方向にも動きます。
最終的にどの程度のブレ幅となるのかは、誰にもわかりませんが、
過去のデータからある程度の期待値を投影することが可能です。
一般的にリスク、リターンという風に表示されているものは、
過去のデータから約70%の確率で想定される価格のブレ幅の範囲と一般的な期待値となります。
例えばリスクが6.1%でリスクが9.8%の投資信託に100万円を投資する時、
一般的に投影される価格のブレ幅の範囲と一般的な期待値は以下のようになります。
(1年の期待リターンは約106万1000円、リスクの範囲は約957,000円~約1,165,000円)
図:著者作成。無断転載・コピーはご遠慮ください。
時に、例えばリーマンショックのような大きな暴落も、あるいはこれらの想定を上回る大きなリターンも
約15%の確率で起こりうるということとなります。
なお、リターンとはリスクの結果えられる利益や損失のことを言います。
家計の資産の中には、このようなリスクにさらしてはいけないお金も存在しています。
またリスクをとるのであれば、より安定的なリターンを得ていくために、ある程度長期で資金を確保しておく必要もあります。
(短期的な収益を狙うことは不可能ではありませんが、やはり難しいことです。)
ご自身の家計と資産と照らし合わせた上でリスクを捉えられているでしょうか。
あらためて確認してみましょう。
前述のとおり、投資にはあててはいけないお金もありますし、リスクがありますから、
ご自身の目的と照らし合わせた上で本当に投資が手段として適しているのかという点を丁寧に見ていく必要があります。
シニアの方は、これまでご自身が積み重ねてきた財産をお持ちのことと存じます。
財産とは、不動産や貯蓄だけではなく、例えば、ご自身のキャリアプランや公的年金記録、
企業年金記録や個人年金保険なども含んでいます。
これまでご相談をお受けする中では、投資というご自身にとって未知のものに挑戦しなくとも、
こういったすでにご自身がもつ財産を活かすことでよりよい老後生活を描くことが可能となった方は多くいらっしゃいました。
また、ご自身の目的を叶えるためには投資では難しいというケースもありました。
キャリアプランを見直して、公的年金の金額を増やしたり、例えば企業型確定拠出年金など、
企業年金の種類によってはご自身で退職金を増やすことも場合によっては可能となります。
個人年金保険について、高利率のものを活かすという方法もあるでしょう。
50代60代の方は人生100年時代という視点で見れば、折り返し地点とも言えますが、
とはいえ、多くの方がこの先得られる収入が固まりつつある段階にあり、
資産の取り崩し時期を見通せる段階にあると思われます。
無理に投資を始める必要はありません。
まずはご自身がこれまでつみあげてきた財産を棚卸して、総点検してみてください。
活かせる方法があるならそちらを優先して取り組んでいきましょう。
これから投資を始めようかな?と思われているシニアの方が投資を始める前に
ぜひふまえていただきたいチェックポイントを3つ挙げ解説しました。
シニアの方にとって、これまで積み上げてきたものは決して小さくありませんし、
棚卸ししようにもお一人では難しいといったこともあると思います。
またインターネットなどで情報が氾濫する中、正しい知識を見分けることもまたやさしいことではないでしょう。
お一人では抱えきれないなと思われたら、ぜひお声かけ下さい。
当オフィスの顧問サービスでは、ライフプランシミュレーションを複数回行い、課題を整理した上で、
公的年金・企業年金を活かし、合理的な資産配置で生涯可処分所得を増やす実行支援を
金融機関等と対峙しながらそれぞれの家計と向き合って丁寧にさせていただいております。
第2の人生のスタートを安心して切れるよう、
必要な助言を惜しまずお力添えさせていただきます。