【2022年7月~】起業後廃業でも4年内なら失業手当受け取り可能に

2023.3.2更新

こんにちは。
ブレない自分と家計をつくる。
家計の総合医。ファイナンシャルプランナーの内田英子です。

 

要件を満たす会社勤めを1年以上続けたのち、退職した人が期間限定で受け取れる失業手当
正式には雇用保険の基本手当と言いますが、民間企業にお勤めして働く人を守る国のセーフティネットです。
退職したのち、個人事業主やフリーランスへ転身すると、失業している状態とは見なされないため、
基本的に失業手当は受け取ることができません。

ところが、2022年7月より失業手当の間口が広がり、
会社勤めののちフリーランスや個人事業主となった方でも、
廃業した場合に失業給付を受けながら再スタートを切ることができるようになりました。
ただし利用にあたっては期限もありますし様々な準備も必要です。

そこで、今回のコラムでは起業後廃業でも失業給付を受けやすくする特例(以下「事業開始等による受給期間の特例」)のあらましから、
その特例を利用する要件や流れについて解説します。

より詳しい解説動画はこちら▼

1、「事業開始等による受給期間の特例」のあらまし
2、利用の要件
3、利用の手続き
4、まとめ

1、「事業開始等による受給期間の特例」のあらまし

「事業開始等による受給期間の特例」は一言で言えば
「会社勤めを1年以上続けたのち、退職して起業した人が早期に廃業した時に
失業手当を受けられるようにする国の特別ルール」です。

失業手当は前述のとおり正式には雇用保険の「基本手当」といいます。
原則退職後1年以内にもらえる失業による当面の収入減を補う
国のセーフティネットとも言えるでしょう。
基本的に雇用者のためのセーフティネットですので、
退職後フリーランスに転身したり起業すると失業手当は受け取れませんでした。

ところが最近はフリーランスとして副業を始めたり、フリーランスに転身したり起業する人が増えています。
そもそも会社員からフリーランスや自営業に転身することはとても大きな不安を伴いますよね。
勤めを果たすことでお給料が約束されていたそれまでの会社員時代。
フリーランスや個人事業主に転身すると、当たり前かもしれませんが、
毎月の報酬は約束されていません。
自分で生み出さなければいけません。
その上、失業給付ももらえなくなるのであれば、
会社員からフリーランスや個人事業主に転身したい方にとっては、
起業独立のハードルはぐんと高くなってしまう恐れもありますし、
廃業した時に経済的にとても厳しい状況に陥ってしまう可能性もあります。

昨年の7月から始まった「事業開始等による受給期間の特例」
はこのような起業のリスクを補う制度とも言えます。

通常の失業手当の期限は1年、しかも起業するとだめ、となっていたところを、
特別に失業手当の申請期限を4年までに延長。
廃業が起業から3年以内なら事業を行っていた期間をなかったことにして失業手当を申請できるとされました。

2. 「事業開始等による受給期間の特例」利用の要件

 特例の利用にあたっては要件があります。
要件は「人」・「事業」それぞれに設けられています。
利用にあたってはそれぞれの要件を満たしていることが必要です。
それぞれの内容を確認していきましょう。

まず特例の利用にあたっては大前提として基本手当の受給資格を持っていることが必要です。
基本手当は退職日以前2年間のうち12ヵ月以上雇用保険の被保険者である期間が必要です。
これを満たさない場合は、そもそも利用できません。
雇用保険に加入して1年以上働き、かつ退職後起業あるいは起業準備に専念した人が対象となります。

事業についても要件があります。
事業を実施する期間が短い場合、基本手当の受給期間の期限30日以内に起業した場合、
特例は利用できません。
自立することができないと認められる事業ではないかどうかは
例えば雇用保険に加入する従業員を雇っている、
や登記事項証明書や開業届の写し等の客観的資料で確認を行います。
事業の実在が証明できない場合、特例は利用できません。

3.「事業開始等による受給期間の特例」利用の手続き

特例の利用にあたっては国の指定する手続きを取る必要もあります。
手続きの要件は以下のとおりです。

あらかじめ「受給期間延長等申請書」に開業届のコピーや離職票などの必要書類を添えて、
事業開始日の翌日から2か月以内に手続きを行います。
実際に廃業してからの手続きでは間に合いませんのでご注意ください。
(特例申請の手続きに必要な書類▼)


(出所:厚生労働省パンフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000952085.pdf

まとめ

起業後廃業でも失業給付を受けやすくする特例(「事業開始等による受給期間の特例」)について解説しました。
どの方も起業する際にはまさか将来休業・廃業するなんて思ってもみないでしょう。
しかし、事業を取り巻く環境は刻々と変わります。
もちろん事業にあたってはさまざまなリスク管理も行うでしょうが、
最終的にどうなるかは誰にもわかりません。

短期間で休業・廃業といった万が一に直面する場合は、
経済的にも苦しい状況に陥るケースもあるでしょう。
そのため、万が一の際、利用できるセーフティネットを多く知っているほど、
きっとあなたの力となることが期待されます。

ちなみに、事業資金の借入を利用する方も多いですが、
事業資金の返済を返せないからといって勝手に放棄したりすると
その後一切の借入ができなくなるといった重いペナルティを負うことなります。
事業用資金の借入は慎重に吟味しましょう。

個人的には私が開業届を出したときはこのような特例はありませんでしたので、いいなあと素直に思います。
(私の場合は、そもそも退職して数年経っていましたので基本手当の受給資格は持っていませんでしたが。)

国のセーフティネットはご自身での申請が必要です。
先の読めない時代ですが、起業支援の流れはあるようです。
しっかりと情報を集め、上手にご自身のプランに活かしていきましょう。