国民年金納付45年は損?

こんにちは。
家計の総合医。ぐっすり眠れる家計運用コンサルタントの内田英子です。

10月15日、政府が国民年金の保険料納付期間を5年延長し、
65歳までの45年間とする検討に入ったと報じられました。
国民年金保険料の納付期間が5年増えると
保険料負担は少なくとも96万円程度※(令和4年度)増えるため、
国民からの巻き上げや今の年金受給者への肩入れだ、などと、厳しい声が相次いでいます。
※令和4年度の国民年金保険料月16,590円を一番おトクな”2年前納”と“1年全納”で支払った場合の試算です。

国民年金保険料の負担期間が延びるということは確かに家計の負担は増すことになりますが、
本当に今保険料を納付している現役世代は
損することばかりなのでしょうか?

国民年金保険料は1年納付するごとに
約1.9万円の老齢基礎年金を増やすことができます。
そのため5年納付するとしたら、
年間9.5万円の増えた年金を一生涯受け取れるということになります。
25年間受け取れば237万円年金が増えるということになります。
5年納付した場合増える年金保険料の負担額は前述のとおり
およそ96万円ですから、この場合の損得勘定では141万円”トクをする”ということになりますね。

しかし、国民年金保険料を納付しなければならない場合は
家計から支出しなければいけませんから
60歳で定年退職をして働いていない方や
自営業者の方については新たな保険料負担が発生します。
一方で、引き続き60歳以降も働く会社員・公務員の方は
すでに保険料を退職まで納め続けていますから
65歳まで退職しないのであれば新たな負担はありません。

このことからも、もし国民年金保険料の納付期間が
延びる場合にするべきこととすれば、
今60歳で退職しようと検討されている50代の自営業者の方や会社員・公務員の方は、
65歳まで働くというキャリアプランに再設計しなおす必要があるということなのでしょう。

最近は公務員の方も定年年齢が65歳に引き上げになるなど、
全体的に定年年齢は引き上げになっていますから、
必ずしも無茶苦茶な話、とは言えませんよね。

ちなみに、今の年金受給者への肩入れ、といった声もありますが、
そもそも私たちが退職後に受け取る老齢年金の受給額は、
あくまでその人の”納付記録”にもとづいて決定されています。
そのため今の現役世代の納付期間が5年延長したとしても
今の年金受給者の年金額が増えるということは見込まれないでしょう。
もし増えたとしてもマクロ経済スライドなどもありますし、
プラスマイナス0となるといった具合ではないでしょうか。

年金制度は平均寿命が70歳の時に設計された制度です。
確かに近年の年金制度の財政は厳しい状況が続いていますが、
平均寿命が10年以上延びた今でも受給時期は5年しか伸びていません。
すでにさまざまな施策も打たれていますが、
今の長生き時代においては
より一層の改定が必要となるのは自然なことではないでしょうか。

個人的には”100年安心”とのうたい文句は現状では詐欺のように感じますし、
今回の検討と同時に年金受給時期の延長も同時に議論されるのではないかと気になっています。

年金制度はとても大切な制度だと思います。

国民年金給付の財源の2分の1は税金です。
財源の多くを納付保険料で占める厚生年金と比較すると
”保険料が割安”な年金保険とも言えるでしょう。

そして年金制度は納付が厳しい時にも
保険料の半分を国が代わりに納めてくれているようになっています。
そのため家計が厳しい時にもきちんと手続きを踏めば
年金受給の権利は確保されている”とても手厚い保険”とも言えるでしょう。

だからこそ国も国民が理解できるように手を尽くして欲しいと思う一方で
私たち国民も年金制度の維持を縁の下で支える人たちと制度を
信頼しなければならないとも思います。

いずれにしても私たちは意見をもちながら、
長期の目線で家計を設計していく必要性が高まっていると思います。
あらためて日々の暮らしを振り返るきっかけとし、
変わらずできることをこつこつと積み重ねていきましょう。

※10月分はおかげさまで満席となりました。
また来月のご予約をお待ちしております。